人に褒められることの少ない僕ではあるけれど、その昔に妙な言葉で(たぶん)褒めてくれた先生のことが忘れられない。
そう、あれはもう三十数年は前のことか。コピーライター養成講座の修了を間近に控えて、その先生がある広告代理店のクリエイティブ・ディレクターに、僕を紹介したときのひと言である。
「タレントかどうかは分かりませんがね、キャラクターはいいと思いますよ」
俄かには理解できずに、僕はかたわらで怪訝な表情を浮かべる。才能があるかどうかは分からないと言っているのだ。そんなふうに紹介された僕の立場は、大丈夫なのだろうか。妙な不安がよぎったことを覚えている。
自動車整備士。まったくフィールドのちがう仕事を身に付けた息子ではある。そのタレントは想像がつかないけれど、キャラクターはいいもん持ってると思いますよと、つい紹介したくなるのは、やはり、親ばか以外の何ものでもないのだろうか。
宮腰マサオ@金沢