もう70歳を超えた母は、よく旅に出る。
煎茶道家元という商業柄、
あちこちに教室があり、
そこに出向くことも多いが、
僕から見れば、それは口実で、
母は旅に出て、様々なところへ行くことが好きで好きでたまらない、ようにしか見えない。
茶道家なる職業は、何歳になっても、
いかなる場所においてもできる職業である。
あらゆる場所で、茶道が作る小宇宙を構築する。
決して絢爛豪華な茶室である必要はない。
野点でも、電車の中でもよい。
場所ではなく、お茶とお茶をたてる人とのコミュニケーションがすべてなのである。
すべては自身が作る小宇宙とのコミュニケーションなのだ、と僕は母から学んだ。
旅に出て、自分と向かう。
人と向かう。
その土地土地と向かいあう。
僕もそうして日々を過ごしている。
Have a nice trip!
人生は、旅であると、僕は母から学んだのである。
高城剛
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