私が帰宅すると真先に出迎えてくれるのが、幼稚園に通う一人娘。
満面の笑みで「パパーッ」と叫びながら抱きついてくる。
と同時に私の身体をジャングルジムのようによじ登ろうとする。
娘はでかいので重たいのだが、このとき私の疲れは吹き飛ばされる。
いやなことがあっても、ひととき忘れることができる。
ところが私の周りにいる連中は口をそろえて、こう言う。
「かわいいのはいまだけだぞ。そのうち“お父さん臭い”なんて言われるぞ」と。
思春期を迎えるころ反抗するようになるのが親離れのサインと
ある本に書かれていたが、親に対し子どもから距離を置くようになる
という現象は、どこの家庭でも公平に起きているようだ。
なら、いまを大切にしよう。かわいがった分しっかり応えてくれる、
このかけがいのない時間を、私の宝物にしよう。
そして、やがて娘の態度が様変わりする日がやって来ても、
その事実を冷静に受け止めよう。
局面に及んで絶対うろたえたりしないぞ、と覚悟を決めたつもりではいるのだが。
果たして、そのとき私はどんなリアクションをとるのだろう。
その年、ブルースさんに親子写真を撮ってもらうことは実現するのだろうか。
左から手塚晶子 百音 俊平
閑話休題。
親子の日普及推進委員会(ちなみに、このネーミングは私です)のメンバーとして、
私もずっと活動させてもらっているが、最も象徴的な活動は
親子の日当日に開催されるスーパーフォトセッション。
ブルースさんが1日で100組の親子を撮影する一大イベントだ。
2004年は、被写体になった全親子のインタビューを私が担当したのだが、
そこでとても印象的だった話をひとつ紹介したいと思う。
それは高校生の息子さんと中学生の娘さんと訪れた両親の話。
年頃の子どもたちなので、最近は親子で出かけることもないし、
会話もめっきり減ってきたらしい。
親子関係がどこかスムーズにいっていないことを、
お父さんは忌憚なく話してくれた。
そんな折、ブルースさんに親子写真を撮ってもらえることになったので、
一生懸命に子どもたちを説得し会場を訪れたのだ。
インタビューの最後を、お父さんはこんなふうに締めくくってくれた。
「今日の撮影があったから、久しぶりに子どもたちと一緒に外出できたし、
いろんな話もできました。本当にいいきっかけをいただきました。
帰りは家族みんなで食事してから帰宅します」。
このとき、私は親子の日のポテンシャルの高さを実感した。
ちょっとだけギクシャクしていたある親子が、
その関係をメインテナンスするための機会をつくる手助けができたのだから。
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