その1
初めて手渡してくれた息子のCDを聴きながら書いている。これだけでも十分に「親バカ」。
今年28歳になる息子どのは、高校生の頃からバンドを始め、
いつの間にかプロになるんだとか・・・。
「ミュージシャンは一家にひとり」と決めていた私は、仰天。
父親である夫も「何考えてるんだ!」と、同じ土表で仕事されることに反対。
もちろん、音楽という仕事の難しさを身にしみて分かっているからこその言葉だったのでしょうが・・・。
以来、息子がどういう音楽をやっているのかも知らず、ライブを観に行ったこともない。
それが今年になって、「聴いてください」と1枚のCDを置いていった。
夫はそれをヘッドホーンで聴き、そしてひと言「負けたな」。
いま私たちは、息子のライブを観に行こうと話している。
夫は複雑らしいが、私はちょっぴり甘酸っぱい思いはあっても楽しみの方が大きい。
息子のおかげで、若い人のライブに遊びに行けるのだから。
その2
2、3日前のこと。息子の幼稚園時代の仲好しグループのママ達と数年ぶりに食事をした。
あの頃は家族ぐるみで遊んだり、旅行したり密度の濃いお付き合い。
うちの息子も私もこの家族に助けられ育った気がする。
みんな一緒におっかなびっくりの子育て、幼稚園生活だっただけに話は尽きない。
初めて子供たちだけで遊びに出したものの心配で、ずっと影で見ていた話。
YMCAのキャンプに行かせたものの、地震が来るとの噂に心配で居ても立っても
いられなくなり、車で迎えに行き、一緒に行っていたお友だちのことなどすっかり忘れて、
自分の息子だけ連れて帰ってしまったこと。
みんな初めての子供で、男の子。今から思えば大笑いだが、
当時は必死で「親バカ」にも気づかない。
また、超過保護に育てたS家のK君は、いま過酷なサラリーマン。
そのK君が最近こう言ったそうな。
「僕は本当に大切に育てられたと思っている。だからこの先どんなことがあっても大丈夫だよ」って。
それを聞いて「K君は優しい子だもの」「大人になったわね~」
「そんなこと言われたら泣いたでしょ」などと
口々に言いながら、みんな目はウルウル。
こんな「親バカ」話を心置きなくできるのも、20数年の付き合いだからこそ。
いくつになっても、たまには思いっきり「親バカ」になるのもいいもの。
だって、親だって大変だったのだから。
「また会いましょうね」と、これからも続いていく楽しい付き合い。
これも息子のおかげなのだ。
小斎富士子