東日本大震災後の6月と12月、ブルース・オズボーンは被災地に出かけて被災地の親子写真を撮影。その写真を被災者にプレゼントする活動を行ってきました。その親子を昨年の12月に再び訪問。撮影した写真の一部がナショナルジオグラフィック日本版3月号に掲載されました。被災からもうすぐ2年目。時間とともに人の心から忘れ去られてしまいがちな記憶を改めて思いおこして復興への希望につなげたいと思います。
_ナショナルジオグラフィック3月号より書き起こし抜粋_
被災地の親子 〜今日も一歩、一歩〜
東日本大震災が発生した日の夜、テレビから流れる衝撃的な映像と原子力発電所の恐ろしい情報に神経をとがらせて、不安な時を過ごした。しかし、被害が明らかになっても、自分が何をすべきか、情けないことに、すぐには考えつかなかった。
震災発生から3ヵ月たったある日、避難所の親子が、取材していた新聞記者に「写真を撮って欲しい」と頼んだというニュースを見た。その親子の言葉に背中を押されるように、6月13日、私は被災地に赴いた。30年前に「親子」というテーマに出会い、4000組を超える親子の情景を写真におさめてきた私にできるのは、“被災地の親子の今”を撮影して、その写真をプレゼントをすることだと確信して……。
被災地を訪れ、言葉ではとても語り尽くせない壊滅的な光景を目の前にした時、災害が運んで来た深い悲しみに負けないで欲しいという願いがさらに強くなり、シャッターを押した。
親子の絆、人を思いやる優しさ、まっすぐ立つ強さ。出会ったどの親子も、過酷な記憶や厳しい現状を心に包みこんでカメラの前に立ち、津波も押し流せなかった大切なメッセージを私に伝えてくれた。
昨年12月、 彼らの今を写真に収めたいと、東北を再訪した。震災前と同じ仕事で生活できるようになった人がいる一方、がれき撤去や除染作業で生計を立てている人も数多く、再建への課題の多さを改めて実感した。それでも、今をしっかり生き抜けばきっと未来に光がさすはずだと、私に再確認させてくれた。
被災地で出会ったみなさん、ありがとう。
---ブルース・オズボーン---