長年、親子写真を撮り続けて来たブルース・オズボーンにとって、又一人、懐かしい人が逝ってしまった。
野坂昭如さんとお嬢様の写真を撮影したのは、1988年のこと。撮影日の1週間前から、毎朝のように野坂さんから電話があった。「着るものはタキシードでいいですか?」とか、「撮影時間のどのくらい前に行けばいいですか?」とか・・・が、電話をかけてきた理由だった。撮影当日、スタジオに現れた野坂さんは、オズボーンに「よろしくお願いします」と一言。無言で、タキシードについた糸くずをテープを使ってとっていた。撮影中も、直立不動で、会話はほとんど無かったと記憶している。「機嫌が悪いのかな???」と心配しながら、撮影は終了した。後日、雑誌に、「ブルース・オズボーンに親子で撮影をしてもらった。だいじな娘との写真を撮ってもらうにあたり、1週間、好きなお酒を飲まないで過ごした」と書いてあった。
真っすぐに生きてきたから、いろいろな衝突もあったが、心の奥に秘めた深い愛が、写真に現れている。
ご冥福を祈ります。