子どもたちの話題が盛んに取りざたされる昨今。今更ですが、東京新聞に掲載されていた教育評論家の尾木直樹さんのお話に共感しましたので、紹介します。大人にも子どもにも共通して受け止められること。そして親子の関係も・・・当たり前で不変な事実だと思います。
「道徳教育をやれば、いじめがなくなる」なんて真っ赤なうそなんですよ。大津市で2011年、中学2年の男子生徒がいじめを苦にして自殺する事件がありました。実はその学校は事件の前年度まで、文部科学省の道徳教育実践研究事業の推進校だったのです。道徳教育の強化ということで、教科にすることが決まりましたが、私は反対です。教科にすると、評価の問題が入ってきます。教師はそういう目で子どもを見ないといけないし、評価されると分かると子どもの行動も逆に制約を受けるんです。教師にも縛りをかけ、子ども達も縛ることになるでしょう。道徳というのは、人間、人と人の間に成立しなければいけないモラルのことです。お年寄りを見たら席を譲ろうとか、道にごみを捨てないとか。まず、何かをしなければいけないかの判断力が必要です。そのためには、徳目などの形で子どもに規範を教えていくことが重要なのは確かです。でも、問題は、何をやらなければいけないか分かっていても、実際にできない子どもがいることなんです。判断力から、行動力に移せるかどうかが問われている。その段差を埋める鍵になるのは自己肯定感です。自分を肯定できない子は他人を認める感性が育ちにくいからです。そういう感性をどう育てるか。私はシチズンシップの教育が大事だと考えています。市民の一人として社会の運営に携われるような資質や能力を育てる教育です。多文化共生社会の中で多様な価値観を認め、合意を形成できる人です。(東京新聞より)